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加賀温泉郷のひとつ、山中温泉に位置する「お花見久兵衛」は、日本の文化をより身近に感じてもらうため、「Ryokan Cafe」をスローガンに掲げる旅館。今回、食事提供のスタイル変更に伴うレストラン改修を計画し、デザインコンセプトの策定からアート・インテリアプランのコーディネートまでを担当した。
改修のテーマは「山中温泉の四季折々の自然を感じるレストラン」。従来の旅館の食事処とは異なり、ハーフビュッフェ形式を採用したレストラン形式を取り入れた。また、本来旅館が持っていた文化のハブ機能を表現するための場を創出することを目指した。山中温泉の自然美を象徴する鶴仙渓の空気感を取り入れ、「春夏」と「秋冬」の2つのエリアにゾーニングした空間に仕上げた。九谷陶芸家の丸谷牧子氏(MUMCA)、染色家の坂野有美氏、染飾家の皆川百合氏の3名がそれぞれの表現で鶴仙渓を描いてもらい、アートで表現するものが滞在中身近に感じてもらえる仕掛けを試みた。
丸谷牧子氏(MUMCA)は、ビュッフェカウンターを照らすペンダントライトを制作。丸谷氏は風景の境界線を抽出し形取る作品づくりが特徴で、鶴仙渓に咲く藤の花や遠くに見える稜線をイメージした、お花見久兵衛らしいポップな作品を作り上げている。
坂野有美氏は、鶴仙渓の木々の隙間から望む枝葉や街をとりまく湯気街道の風景を、墨による描画で表現したパネルを制作。坂野氏らしい大胆な筆致が魅力となっている。
皆川百合氏は、「春夏」「秋冬」の2ゾーンを横断するペンダント照明を制作。皆川氏の大胆かつ繊細な色使いで、渓谷から見上げる草木や空を有機的に表現し、空間全体をまとめ上げた。また、エントランスには旅館で働くスタッフの染め体験で作られた20枚以上の布を用いたファブリックカーテンを制作。スタッフそれぞれが山中温泉の色を抽出しながら思い思いの色を差した。染め・洗いの工程には山中温泉の温泉水や鶴仙渓の川水を使用し、地域の特色を活かした作品に仕上げたメイドイン山中温泉となっている。
コロナ禍でのイメージ刷新を図るなか、お花見久兵衛は“時代に合わせた旅館の楽しみ方”をキーワードにアップグレードを行っている。今回のレストラン改修プロジェクトでは、お花見久兵衛の持つコンセプトを大切にしつつ、アート体験を通じて訪れる人々に美しさと親近感を感じてもらえるようなアップデートを実現することができたものであった。
2024
クライアント
株式会社吉花 山中温泉お花見久兵衛
クリエイティブディレクター / アートコーディネーター
吉崎努(MiKS)
内装設計
北陸ミサワホーム株式会社
家具設計
株式会社宝来社
アートデザイン
皆川百合(Yuri Minagawa)
丸谷牧子|MUMCA (Makiko Marutani)
坂野有美(Naomi Sakano)
スペシャルサンクス
お花見久兵衛 スタッフ御一同
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